大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和36(オ)894 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人野間繁、同寺本直吉の上告理由第一点について。

論旨は、原審が上告人の弁論再開の申請を容れないで判決したことが審理不尽の

違法である、と主張する。

しかし、上告代理人寺本直吉が原審に弁論再開の申請書とともに提出した「準備

書面」と題する書面に、所論のごとく、上告人が本件抗告審判の請求を法定期間内

になし得なかつた事由として、上告人は本件特許無効審判の審決に不服であつたの

で適当な代理人に依頼して抗告審判の請求をしようとしていたところ、インフルエ

ンザにかかり高熱のため心神もうろう状態が続いているうちに法定の抗告期間を徒

過し、ようやく小康を得てから弁理士Dに依頼して本件抗告審判の請求に及んだ旨

の記載があるとしても、記録によれば、右弁理士Dは、本件特許無効審判事件に終

始関与していたばかりでなく、その委任状には抗告審判の請求に関する権限をも授

与する旨の文言が記載されていることが明らかである。かかる場合においては、手

続の追完が許されないこと後記説示のとおりであるから、原審が右弁論再開の申請

を容れなかつたことは、正当であるというべきである。

されば、右と相容れない見解に立脚して原判決に所論の違法があるとする論旨は、

その理由がないことに帰着し、採るを得ない。

同第二点(一)について。

論旨は、要するに、原判決が弁理士Dに本件抗告審判について上告人を代理する

正当な権限があると判断したことが、慣習ないし経験則に違背する、というのであ

る。

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しかし、特許の無効審判事件において当事者が弁理士に対して交付した委任状に

当該審判手続のほか抗告審判に関する特別委任をなす旨の文言が印刷記入されてい

る場合に、かかる文言を全然意味のない例文であつて、委任者に抗告審判の代理権

限を予め授与する意思はなくまた受任者においてもこれを受ける意思がないものと

認めるのを通例とするがごとき経験則のないことはもとより、かような慣習の存在

することが裁判上顕著な事実であるとはなし難く、また記録を精査しても右の慣習

の存在を肯認するに足る資料はない。

されば、上告人が本件特許無効審判事件において弁理士Dに前記のごとき権限を

授与する旨記載してある委任状を交付し、それが特許庁に提出されて記録に編綴さ

れていることの明らかな本件において、原審が右弁理士Dは本件抗告審判について

上告人を代理する適法な代理権限を有しているものとした判断は、正当であつて、

所論の違法はなく、論旨は、採るを得ない。

同上(二)について。

論旨は、原判決が上告人に対し特許法二五条による追完を認めなかつたことに審

理不尽の違法がある、と主張する。

しかし、期間不遵守につき、当事者本人にその責に帰することができない事由が

あつても、同人に代わつて当該手続をする権限のある代理人に右の事由がない場合

には、懈怠した手続の追完を許さないことは、当裁判所の判例とするところである

(昭和三一年(オ)第四二号、同三三年九月三〇日第三小法廷判決、民集一二巻一

三号三〇四〇頁)。

それ故、期間不遵守につき、仮りに上告人本人にその責に帰することのできない

事由があつたとしても、上告人に代わつて本件抗告審判の請求をなす権限を有する

弁理士Dにも右の事由があつた旨の主張・立証のない本件において、原審がその懈

怠した手続の追完を許さなかつたのは、正当であつて、所論引用の判例は本件に適

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切でなく、論旨は、採るを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 河 村 又 介

裁判官 垂 水 克 己

裁判官 石 坂 修 一

裁判官 五 鬼 上 堅 磐

裁判官 横 田 正 俊

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